
“シニア・ホスト・クラブ・和光”シナリオ
1.舞台設定・小道具等:
長テーブル2卓、小テーブル1卓、椅子8脚、白板1枚(以上は会場設備)、ホストは揃いの衣装(白のワイシャッツ、黒の蝶ネクタイ、紺又は黒のズボン、黒のソムリエ・エプロン)、紙コップ1ダース、空シャンパン・ボトル2本、空ワイン・ボトル2本、シャンパン・タワーのパネル、張り紙用模造紙、飾り用のモールや風船、セロテープ等、レコーダー(録音機)。
(パネルに下記記載の張り紙を張り付ける)
1.「シニア・ホスト・クラブ・和光」
(“三高イケメン揃いの店”) 大きな紙看板(横書)
2.本日の出勤者と年齢を書いた張り紙
頼朝 30歳
海斗 33歳
龍馬 35歳
敦 80歳
3. メニュー (大きめの模造紙に書く)
(料金)
シャンパン ドンペリ 30万円
赤ワイン シャトー・ラツール(ボルドー) 25万円
赤ワイン シャトー・マルゴー(ボルドー) 20万円
白ワイン ロマネ・コンティ(ブルゴーニュ) 30万円
初回限定(1時間 飲み放題) 1000円 ポッキリ
赤玉ポート・ワインまたはアサヒ・スーパー・ドライ
4.イケメン・ホスト急募、未経験歓迎、待遇:要相談、介護保険利用可
2.キャスト:
女客1 「あおい」(大谷)
女客2 「さとみ」(秋山)
女客3 「ひかり」(飯沼)
女客4 「ゆりこ」(宇津木)
女客5 「えりか」(初回の客・官野)
ホスト1 頼朝 30歳(池田)
ホスト2 海斗 33歳(大森)
ホスト3 竜馬 35歳(岡島)
ホスト4 敦 80歳(体験入店・敦)
3.練習会場等
サン・アゼリア内2階の会議室A、8月28日(火)の午前9時から午後5時までを予定、借料3,220円
台本:
ナレーター 「いらっしゃいませ! いらっしゃいませ! 当店は守田校長にも御愛顧頂いております川越ウエスタにある“萌えと憩いの御殿・シニア・メイド・喫茶”の系列店として、今年5月に和光市にあるサン・アゼリアの2階に開店しましたイケメン揃いの“シニア・ホスト・クラブ”です。
現在、埼玉県においては高齢化が急速に進んでいます。その内、末期高齢者の約8割は女性であるのが現状です。女性は間違いなく男性より長生きします。
それでは、その女性高齢者たちに、生き甲斐を持って長生きしてもらうために、一番必要なものは何か? 介護施設? 違います。それは若き日のトキメキを彷彿とさせてくれる憩いの場としての“シニア・ホスト・クラブ”です。
本日は「すてきな日本語を学ぶ」科の授業において、風見雅章先生から教えていただいた、数々のすてきな若者言葉や美しい伝統のある日本語を駆使した会話もお楽しみください。
さて、いよいよ開店の時間が迫っておりますが、予め会場の皆様に、一つだけお願いがございます。本日は会場とステージが一体となるよう、盛り上げて参りたいと考えておりますので、会場の皆様におかれましては、要所・要所での大きな拍手や、大きな笑を期待したいと思っております。それがありませんと、数人の老人たちが、ステージ上で単に何かブツブツ言いながら徘徊しているだけの舞台になってしまう恐れがございます。そのところよろしくご理解の上、ご協力をお願い申し上げます。
それでは寸劇シニア・ホスト・クラブの開店です」
動きの説明:今は開店30分前、ホストとしての体験入店を希望する男性がお店を訪れる、敦はあらかじめ緞帳前の左側に立っている。
男性(敦) 「すみません~」
動きの説明:頼朝が右側から緞帳の前に入って来て、男性に歩み寄る。
頼朝:「開店時間はまだですが、何かご用件でしょうか?」
男(敦) 「こちらでホストを募集していると聞いてやってきたのですが」
頼朝 「はい、確かに募集していますが、どこでその募集を知ったのですか?」
男性(敦) 「はい、定年後の職を求めて、和光市役所内にあるシルバー人材センターに行ったところ、窓口の担当者から、貴方はイケメンだから、このホスト・クラブに応募してみては如何と言われて来ました」
頼朝 「マジですか、よく見ると確かに若い頃はイケメンだったみたいな感じつうか、ところで貴方の最終学歴は?」
男性(敦) 「はい、彩の国いきがい大学和光学園のすてきな日本語を学ぶ科卒です、ぶっちゃけ守田校長の推薦状も持って来ました」
頼朝 「超やばい、はい一発合格、あの超難関校、それもすてきな日本語を学ぶ科卒であれば、マジで採用決定です。それにあのハンサムな守田校長の推薦状があるとはめっちゃ素晴らしい。今から直ぐに働いてください。ところでホストの経験はありますか?」
男性(敦) 「いいえ、経験はありませんが大丈夫でしょうか?」
頼朝 「いきがい大学卒業程度の教養をお持ちの方ならマジ問題ありません、店内でのホスト名は敦としますので、今すぐ着替えて働いてください」
動きの説明:頼朝と敦の二人は緞帳の裏にまわり、所定の位置に着く。
動きの説明:ここで緞帳が上がる。店内には4名の女性客とホスト4名がそれぞれの席について適宜、歓談し、盛り上がっている、竜馬とさとみの会話が聞こえる。
竜馬:「さとみ姫は、いつもながらお洋服のセンスが超すばらしいですね」
さとみ:「マジ、お口がお上手ですこと、でも、誰にでも同じようなことおっしゃっているんでしょ」
竜馬:「ぶっちゃけそんなことありませんよ、ほら今日、お店にいらっしゃっているお客様を見ても、さとみ姫ほどセンスの良い人は居ませんよ、ところで、最近、余り外へのお誘いがないんだけど、他にいい男できたの?」
さとみ:「えッ、それってヤキモチ? 超嬉しいわ、それでは、今度の竜馬の誕生日には、和光西口銀座にあるダイソー100円均一ショップにご一緒して、欲しい物なんでも買ってあげる」
竜馬:「すご~い! さとみ姫ありがとう。マジ卍(マンジ)。さあ、さとみ姫、今夜はどんどん飲みましょう、私的には、もう一杯いただいてよろしいでしょうか?」
さとみ:「どうぞ、どうぞ」
動きの説明:そんな中、初来店の女性客のエリカが入口に現れる。
エリカ 「こんにちは!」
動きの説明:それを見つけた海斗は接客中の女性客あおいに対し。
海斗:「あおい姫、ちょっと失礼します。すぐ戻ります」
あおい:「ちょっとだけよ、すぐに戻ってこないとつねっちゃうから」
動きの説明:海斗は席を立って、入口へ出迎え。
海斗:「いらっしゃいませ、初めてのご来店ですか? 申し訳ありませんが、当店は20歳未満の方のご入場は固くお断りさせていただいておりますが」
エリカ:「あら私こう見えても34歳ですよ」
海斗:「アッ! これはぶっちゃけ失礼しました。私の1コ下ですね、こちらへどうぞ」
動きの説明:海斗はエリカを一人席へご案内。
海斗:「私は海斗と申します、お名前様をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
エリカ:「エリカと申します」
海斗:「それではエリカ姫と呼ばせていただきます。次回は是非、私、海斗の方を指名願います。因みに初回の方は、あちらのメニューにあります通り、1時間飲み放題で、ぶっちゃけ千円ポッキリとなっております。お飲み物は赤玉ポート・ワインかアサヒ・スーパー・ドライが選べますが、どちらにいたしましょうか?」
エリカ:「それでは赤玉ポート・ワインでお願いします、ところであそこに三高イケメン揃いの店と書いてありますが、その三高とは何ですか?」
海斗:「良く気づいてくださいました、三高とは、ぶっちゃけ高年齢、高血圧、高脂血症の三高って感じです」
エリカ:「あらまあ、昭和の三高といえば高学歴、高身長、高収入だったはずですが、世の中、大分、変わりましたね」
海斗:「はい、当店のホスト達も昔はそれなりに、それなりの三高だったようですが、今や寄る年波には勝てないようです、それでは後ほど、本日入店したての、敦がご注文の赤玉ポート・ワインをお持ちし、お相手させていただきますので、時間いっぱいお楽しみください」
エリカ:「あら海斗さんがお相手してくださるのではないんですか?」
海斗:「すみません、ぶっちゃけ私には先約がありまして、マジ卍」
エリカ:「でも敦さんは80歳なんでしょ?」
海斗:「ぶっちゃけ一人分の指名料で20歳のホスト4人に囲まれると思えばお得な計算ですよ」
エリカ:「それもそうですね、それでは敦さんでよろしく」
海斗:「敦さん、1番テーブル、ご新規の一名様よろしく」
動きの説明:海斗は元の席へと戻る、敦は、紙コップとボトルを持ってエリカの席へ。
敦:「お待たせしました、こちらが赤玉ポート・ワインの方になります。エリカ姫、本日はご来店マジありがとうございます、敦と申します、今、海斗から聞きましたが、エリカ姫はマジ35歳なのですか? どう見ても20歳そこそこにしか見えませんが」
エリカ:「まあ、敦さんたら、おもはゆいこと、紅葉を散らす思いですわ」
敦:「それって大和言葉ですよね、私も先般、いきがい大学で勉強しました。ところでエリカ姫、敦さんなんて、さんづけは止めてください、敦って呼んでください」
エリカ:「それでは敦、一コ質問があるんだけど、このお店にホストは4人しかいないの?」
敦:「いいえ、当店は埼玉県下では一番のホスト在籍数をほこっていますが、本日はたまたまホストの多くがディサービスや通院、または本人のお通夜の日と重なっているようです」
エリカ:「まあ、そうですか、それからこのお店はワイン・グラスではなく、紙コップでサービスするんですか?」
敦:「はい、これは単なる紙コップではなく、検尿用のメモリのついた紙コップです、多くのお客様から、この方が日頃から使い慣れており、親しみを感じるとのことで、当店ではこれを使用しております」
動きの説明:頼朝とゆりこ姫の会話が聞こえる。
頼朝:「ゆりこ姫、前々から一コ、お聞きしたいことがあるのんですけど、ぶっちゃけ聞いてもよろしいでしょうか?」
ゆりこ:「まあ、そんなに改まって何ですの? 歳の話はだめですよ」
頼朝:「そんなダサい事は聞きませんよ、ゆりこ姫ってハーフでしょ?」
ゆりこ:「あら判ります? マジそうなんです」
頼朝:「やはりね、だからこんなにお美しいんですね、ご両親はどちらの出身ですか?」
ゆりこ:「ハイ、父が埼玉県で、母が茨城県のハーフです、今日は超気分がいいから、シャンパン・タワーを頼んじゃおうかしら」
頼朝:「ゆりこ姫、マジありがとうございます」
動きの説明:頼朝は大きな声で。
頼朝:「こちら、ゆりこ姫からシャンパン・タワーの注文をいただきました~」
ゆりこ:「さあ、今夜はめっちゃ気分が良いのでみんなでパッとやりましょう」
頼朝:「はい、はい、はい、ホストは全員集合!」
動きの説明:ホスト全員がシャンパン・タワーの周りに参集、頼朝と海斗がシャンパン・ボトルを持って、注ぎつつ、その他のホストも全員で声を揃えて、元気よく。
ホスト全員:「今宵も素敵なハニー、ゆりこ姫へ、I want you, I need you,ソッ!ソッ!ソッ!ソッ!ソソゲー! まだ、まだ、まだ、まだ、ソソゲー!ソッ!ソッ!ソッ!ソソゲー!」
動きの説明:注ぎ終わると、シャンパン・タワーの上段からコップを一つずつ取り、全員に手渡しする、配り終えたところで。
頼朝:「それでは皆んなで、乾杯~・・・ゆりこ姫、ありがとうございました!」
動きの説明:ホスト全員、元の席に戻る、少し間が開いたところで。
ひかり:「すみません、私、今日、マジ誕生日なんですけど」
海斗:「マジっすか、ひかり姫、おめでとうございます、それでは全員で当店恒例のお祝いソングを歌わさせていただきます、ホスト全員集合! 今日は、ひかり姫のお誕生日です、元気よく、いつものお祝いソングを歌いましょう、よろしかったらお客様もご唱和願います」
動きの説明:ホスト全員がひかり姫を取り囲み、手を合わせ、歌う体制を取る。
かんじざいぼさつ
観、自在菩薩 ( 観音菩薩が、)
しきふいくう
色不、異空 (形あるものは実体がないことと同じことであり、)
くうふいしき
空不、異色 (実体がないからこそ一時的な形あるものとして存在
するものである。)
しきそくぜくう
色即、是空 (したがって、形あるものはそのままで実体なきもの
であり、)
くうそくぜしき
空即、是色 (実体がないことがそのまま形あるものとなっている)
ぎゃていぎゃていはらぎゃてい
羯帝羯帝、波羅羯帝 (往き往きて、彼岸に往き、)
はらそうぎゃてい
波羅僧、羯帝 (完全に彼岸に到達した者こそ、)
ぼうじ
菩提 (悟りそのものである。
はんにゃしんぎょう
般若心経 (知恵の完成についてのもっとも肝要なものを説ける経典)
ホスト全員 「ひかり姫 お誕生日おめでとうございます」
ナレーション 「当店はこのようにして、女性高齢者の皆様を悟りの境地へといざないつつ、わずかながら残された余生に、潤いの場を提供させていただいております、店員一同、皆様のまたのご来店をマジお待ちしております、本日はありがとうございました」
動きの説明:ホスト、お客、全員で観客に向って合唱。
以上